前立腺がん3・5倍に 昼夜交代勤務の男性 心疾患死亡も2・8倍 | めざせ良質の睡眠 ~老舗ふとん屋が発信する快眠情報~

前立腺がん3・5倍に 昼夜交代勤務の男性 心疾患死亡も2・8倍

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2005年5月2日】

 24時間操業の工場や鉄道、ホテルなどの交代制職場で働く男性は、主に昼間働く日勤職場の男性に比べ、前立腺がんになる危険性が3.5倍、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患で死亡する危険性が2.8倍高いことが、文部科学省が補助する大規模疫学研究(運営委員長・玉腰暁子(たまごし・あきこ)名古屋大助教授)の分析で2日までに分かった。

 不規則な勤務による体内時計の乱れが関与していると考えられ、虚血性心疾患は血圧上昇やストレスも原因とみられる。

 厚生労働省の調査では、午後10時以降の深夜業に従事する労働者がいる事業所は2割に上り、うち半数が交代勤務を導入。研究者らは「前立腺がん検診の導入や、循環器病の危険因子を持っている人の適正配置など、労働管理の在り方を考えるべきだ」と話している。

 一般の人を追跡する大規模疫学調査で交代勤務の健康影響を示した研究は少なく、前立腺がんの報告は世界初という。

 1988年から99年にかけて健康状態を追跡した全国約11万人のデータを利用。産業医大臨床疫学教室の久保達彦(くぼ・たつひこ)医師らは、がん罹患(りかん)調査が行われた地域の男性労働者約1万6000人(40-79歳)を分析した。

 55人に前立腺がんが新たに見つかり、年齢などを統計的に調整した結果、交代勤務者は、日勤者に比べ前立腺がんになる危険性が3.5倍高いことが分かった。

 福岡労働衛生研究所の藤野善久(ふじの・よしひさ)医師が、40-59歳の男性約1万8000人を分析したところ、虚血性心疾患による死亡の危険性は2.8倍と判明。循環器病危険因子を持っている場合は危険性はさらに高まり、高血圧だと6.5倍、喫煙者は3.1倍、習慣的飲酒者は3.6倍、体格指数(BMI)が25以上の肥満では6.1倍だった。


生活時間のブレが元凶 体内時計狂う 
 

 規則正しい生活と不規則な生活のどちらが健康的か-。今回の研究は、経験的、直感的に分かる答えを裏付けた。健康悪化の大きな要因は、生活時間のブレだ。

 人間には、睡眠やホルモン分泌などの生体リズムを約25時間周期で整える体内時計が備えられている。それが1日24時間に順応するのは、日中の太陽の光で正しくセットし直されるためだ。逆に、夜間に強い光刺激を受けると時計は狂い、自律神経の乱れやホルモン分泌低下などを起こすと考えられている。

 今回の研究では、交代制職場の男性は日勤者に比べ、前立腺がんになったり、虚血性心疾患で死亡したりする危険性などが高いことが判明。一方で、夜勤中心の人は、前立腺がんの危険性が日勤者の1.6倍だったが、統計的には明確な差ではなかった。

 夜勤よりむしろ、交代制で日勤や夜勤を繰り返すと健康悪化を招くことを示す結果だ。

 産業医大の河野公俊(こうの・きみとし)教授(分子生物学)は「夜勤中心ならば慣れてくる可能性がある。交代勤務では体内時計が順応できず、仕事のストレスによってできた有害な活性酸素などをうまく処理できていない可能性がある」と指摘している。


生活改善支援や検診充実を 

上畑鉄之丞(うえはた・てつのじょう)・聖徳大教授(公衆衛生学)の話 労働安全衛生法では、深夜業に従事する労働者の健康診断は、日勤職場より多い年2回となっているが、それだけでは足りない。心筋梗塞(こうそく)になる危険性が高い肥満の人に企業がダイエットプログラムを提供するなど生活習慣の改善をサポートしたり、(高齢者に多い)前立腺がんに備え退職後の検診体制の整備を検討したりすることも必要だろう。


体内時計と交代勤務 

体内時計と交代制勤務 体内時計は、睡眠や血圧、体温の変動、ホルモン分泌など生理機能のリズムをつくり出し、生体内の朝、昼、夜をコントロールする。脳の中心部にある細胞が時計のように時を刻みリズムを管理。交代勤務などで深夜まで強い光を浴びると、体内時計は乱れると考えられ、不眠症やうつ、乳がんなどになる危険性を増やす要因になることが分かっている。